近年ではマーケティングの指標としてLTV (Life Time Value)が用いられることも増えてきました。多くの企業でLTVが用いられることになった理由としては近年の様々な背景にあります。
この記事では、LTVについて分かりやすく解説するとともに、LTVを向上させる施策も併せて紹介します。
LTV(顧客生涯価値)とは
LTVとは、「Life Time Value(ライフタイムバリュー)」の略語で、日本語では「顧客生涯価値」と呼ばれています。ひとり、またはひとつの顧客が、自分のビジネスに生涯どれだけの利益をもたらすかを表す指標です。
LTVが高いということは、既存の顧客との関係が良好で信頼を得ることができている状況だと考えることができます。企業としても、LTVを向上させることは、新規の顧客を獲得するよりもコストを5分の1に抑える(1:5の法則)ことができ利益の向上が期待できるため多くの企業がLTVの向上に力を注いでいます。
LTVがマーケティングに重要な理由
LTVがマーケティングを行うえで重要視され始めた理由としては以下のふたつが挙げられます。
【LTVがマーケティングに重要な理由】
- 新規顧客の獲得の難化
- 新しいビジネスモデルの台頭
新規顧客の獲得の難化
新規顧客を獲得するにはコストと時間が膨大にかかります。その割に、市場の飽和が進み、供給過多のなかでコストに見合った成果がでないこともあります。
また、3rdpartycookie(サードパーティークッキー)の規制が進んでいることも大きな影響を与えています。3rdpartycookieとは、訪れたWebサイトが発行するクッキー以外の第三者が発行するクッキーのことです。
たとえば、食べ物のサイトを閲覧しているときに、以前見たことのある車の広告が表示されたといった事例が挙げられます。これが3rdpartycookieと呼ばれるもので、閲覧者の履歴などを記憶して広告表示に反映させる機能です。3rdpartycookieの規制が進むことで、広告を求めている人のもとへ届く機会を減少させることが予想され、新規顧客の獲得が難しくなります。
そのため、新規顧客獲得よりも既存の顧客の満足度を向上させることで、既存顧客をロイヤルカスタマーへと育成することを目指す企業が増えてきています。そのための指標としてLTVが活用されています。
新しいビジネスモデルの台頭
近年では、動画や音楽を定額で気軽に楽しめることから多くのユーザーがサブスクリプションを利用しています。その勢いは動画や音楽などに留まらず、家具や車などのサブスクリプションなど、市場は広がる一方です。
企業にとってサブスクリプションやリカーリングを導入するメリットは何といっても継続的に安定した収入を得ることができやすいことでしょう。顧客がサブスクリプションを継続してくれるほどLTV(顧客生涯価値)は向上して企業の成長にも繋がり、さらによいサービスの提供ができるという好循環が生まれるようになります。
LTVを計算する方法
LTVの計算には様々な方法がありますが、ここでは比較的簡単で多くの企業に用いられる計算方法をご紹介します。
【LTVの計算方法1】
LTV=(平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間) |
この計算方法は、顧客一人あたりのLTVを把握するために適しています。例として平均顧客単価3,000円、収益率60%、購買頻度2回/月(24回/年)、継続期間3年とした場合の算出方法は以下のとおりです。
(3,000円×0.6×24×3)=LTV 129,600円
【LTVの計算方法2】
LTV=顧客の平均購入単価×平均購入回数 |
この計算方法は、売上金額をベースにしたLTVを算出しているときに適しています。具体的な数字を入れると、顧客の平均購入単価1万円、平均購入回数3回の場合の算出方法は以下のとおりです。
1万円×3万円=LTV3万円と算出されます。
LTVを最大化するための施策
LTVを最大化させることは安定した収益の確保に繋がるため企業にとっては特に力を注ぐ必要がある部分です。
そんなLTVを最大化させるための施策として大切なことは以下の4つとなります。
【LTVを最大化させるための施策】
- 1回の購入単価を上げる
- 購入の頻度を上げる
- コストを下げる
- 顧客のロイヤリティを向上させる
LTVを最大化するために最も簡易的に実施できる方法が、1回の購入単価を上げることです。
喫茶店の場合、これまで500円で提供していたコーヒーを600円に値上げすることでLTVの向上が期待できます。ただし、当然ながら商品単価を上げると顧客の来店頻度が減るリスクや、客離れに繋がるリスクを背負うことになります。
そのため、購入単価を上げるためには様々なアイディアが必要です。たとえば、従来であれば1杯500円と1個500円のケーキを、セット割りとして800円で提供すると購入者が増え、結果的にLTVの向上にも繋がります。
購入の頻度を上げる
顧客の購入頻度が多くなるほどLTVは向上していきます。たとえば、リマインドメールを配信して買い替えの時期をお知らせしたり、新しい商品を展開して既存商品からの買い替えを促したりすることで、購入頻度が上がる可能性が高まります。ただし、SDGsの取り組みが進んでいるため、有形の商品を扱っている場合はブランドイメージを考慮する必要があります。
コストを下げる
顧客の獲得や維持には何かとコストがかかります。これらをすべて人の手で行うと人件費がかかるうえに、作業効率も悪くなりコストがかさんでしまうことが問題点です。
そのため、近年ではSFA(SalesForceAutomation)と呼ばれる営業支援システムや、CRM(CustomerRelationshipManagement)と呼ばれる顧客管理に注目が集まっており、ITツールの力によりコストを抑えた正確な顧客獲得や維持が可能となっています。
しかし、過剰なコストカットは社員のモチベーション低下に繋がるため、結果として顧客満足度も下がりLTVを下げてしまうリスクも伴うため注意が必要です。
顧客のロイヤリティを向上させる
顧客から企業やサービスに信頼や愛着を感じてもらうことを「顧客ロイヤリティ」といいます。顧客ロイヤリティが高まれば、中途解約を防ぐことや、リピーター化してもらうことが可能です。また、よりグレードの高い商品を購入してもらうことができれば購入単価の向上も期待できます。
顧客ロイヤリティを向上させるには心理的要素が大きく関与します。企業やサービスに対する愛着や信頼を感じることで顧客ロイヤリティは向上する一方で、不満や疑念を持つと著しく低下します。
たとえば契約している配信サービスが新しい動画をアップしない、頻繁に配信エラーなどの不具合を起こしていれば顧客ロイヤリティは低下し最悪の場合解約に繋がってしまいます。
つまり、顧客を飽きさせないサービスの提供はもちろん、常に滞りなくサービスの提供ができるよう努めることも顧客の信頼感に繋がるため顧客ロイヤリティの向上が期待できるということです。
まとめ
本記事では、「LTV(Life Time Value)」についてご紹介しました。新規顧客の獲得が難しい近年では、LTVを向上させることが企業の成長に大きな影響をもたらすことになります。
顧客から愛され、信頼される企業やサービスを提供するには、様々な工夫や努力が必要になることはどこの企業でも同じです。また、どれだけよいサービスを提供しても最後の部分は人と人です。真心を込めたサービスを提供することが、結果的にLTVの最大化に必要不可欠でしょう。