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化粧品ECサイトの市場規模と今後の課題|コスメ業界の課題を解決するためのポイント

さまざまな物販分野でEC化が進むなか、化粧品のオンライン販売も増えてきています。しかし、それと同時に化粧品ECの課題が浮き彫りになっており、業界ではデジタル技術を駆使した解決方法を模索中です。そこでこちらでは、化粧品ECの市場規模やEC化の現状と課題を詳しく解説します。課題解決のカギを握る技術の導入事例も紹介しますので、化粧品のECサイトを立ち上げたいと考えている方は、ぜひご一読ください。

化粧品ECの市場規模とEC化率

経済産業省のデータによると、物販系分野におけるBtoC-EC市場規模とEC化率は全体的に増加傾向にあり、化粧品もその流れに追従しています。以下は、2019-2021年の化粧品・医薬品のEC市場規模とEC化率の推移を表すグラフです。

(市場規模の単位:億円)

[https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf][https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf]

新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、2019-21年の化粧品・医薬品のEC市場規模は6,611億円から8,552億円まで拡大。EC化率も、6.00%から7.52%へと緩やかに伸びています。

医薬品のデータも含むとはいえ、化粧品のEC市場が拡大し続けていることは数値からも明らか。しかし、次の表で示したとおり、化粧品・医薬品のEC化率は他の商品カテゴリに比べて低いのが現状です。

引用元:https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf

なぜ化粧品のEC化が、他の商品よりも進んでいないのでしょうか。要因は、次項で解説する化粧品ECの課題にあります。

化粧品ECの課題

化粧品のEC化率が低いことには、次のような課題が影響しています。代表的な3つの課題について、詳しく見ていきましょう。

  • 実際に店舗で試したいというニーズと合わない
  • ドラッグストアやコンビニの利便性に負けてしまう
  • 競合他社が多く新規参入しにくい

実際に店舗で試したいというニーズと合わない

まずECでは、化粧品を店舗で試したいという顧客のニーズに応えられない点が大きな課題です。

化粧品を選ぶ際、大抵の人は色味やテクスチャ、香りが自分に似合うかどうか考えるでしょう。しかしECサイトに書かれた情報だけでは、実際につけたときのイメージが具体的にはわかりません。シミ・シワ隠しや美白、保湿といった効果も、試せなければ実感できないものです。また人によっては肌に合わず、アレルギー症状を引き起こしてしまう化粧品もあります。このように、オンライン販売で化粧品を買うことに不安を感じてしまうのが、購入者の心理です。特に高価な化粧品を買う際は、店舗で販売員のアドバイスをもらいながら実際に試し、慎重に選びたいと考える人が多いといわれます。「経験財」とも呼ばれる化粧品は、現物を試せないオンライン販売と相性が悪いために、EC化が進みにくいのです。

ドラッグストアやコンビニの利便性に負けてしまう

ドラッグストアやコンビニの利便性の高さも、化粧品のEC化を抑制している原因です。

ドラッグストア、コンビニでは、「プチプラコスメ」と呼ばれる数百円程度の化粧品が数多く販売され、学生から社会人まで幅広い年齢層に支持されています。オンライン販売でも商品自体の価格は安いことが多いものの、送料も加味するとオフラインより高額になる可能性が高いのです。

さらにドラッグストアやコンビニは、全国に店舗が多くアクセスがよいうえに、上記で紹介したような「現物を試せるニーズ」も満たしています。一方、ECサイトで購入すると配送に時間がかかり、もちろん試すこともできません。

つまり、ドラッグストア・コンビニの利便性を考えると、わざわざECで化粧品を買うメリットが小さいのです。

 競合他社が多く新規参入しにくい

とはいえ、化粧品業界では既に多くの企業がEC市場に参入しています。

しかし、参入している企業には有名ブランドも多く、今からECサイトを構築しても勝算は低いのが実情です。Webマーケティングの広告費が高騰していることもあり、新規参入してコンバージョン(商品購入などの最終成果、以下CV)を獲得するのは難しいでしょう。

またGoogleの検索アルゴリズムが持つ性質も、化粧品ECへの新規参入を困難にしている要因のひとつ。現在のGoogleでは、化粧品や通販業界における大手企業のサイトが上位表示されやすくなり、信ぴょう性が低いとされる口コミサイトの表示順は下げられています。口コミを掲載したアフィリエイトサイトは、化粧品業界で低コストの広告として利用されてきましたが、もはやマーケティング上の重要な役割を失いました。

EC市場に強力な競合他社が多いことは、新設の化粧品メーカーに二の足を踏ませています。

化粧品EC課題解決のポイント

ここまで化粧品ECの課題を紹介してきましたが、現在デジタル技術を駆使して課題解決に取り組む動きが増えています。こちらでは、次の5つの取り組みについて企業が導入した事例とともに紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

  • オンライン接客
  • メイクシミュレーション
  • AI技術を使ったカウンセリング
  • 口コミ・ユーザーレビュー
  • SNSによる発信

オンライン接客

オンライン接客は、ZoomやSkypeなどのビデオ通話ツールを通じて、対面で接客するサービスです。

店舗での接客と同様、顧客の表情や声色を伺いながら細やかな対応ができるのが特長で、一人ひとりの悩みやニーズが読み取りやすくなります。そのため従来よりも商品購入やアップセル・クロスセルを、促進できる可能性が高いです。

また普段からネットで化粧品を買う人や、店舗から遠い地域の居住者にとっても便利なサービスですので、新たな顧客の獲得にもつながるでしょう。

具体例としては、オルビスのオンラインカウンセリングが挙げられます。専属のビューティーアドバイザーに肌の悩みやメイク方法を無料相談でき、15分/45分コースに分かれているのが特徴です。じっくり相談できる45分コースでは、その場での商品購入も可能。

化粧品のプロに助言してもらいながら商品が選べることは、顧客にとって大きなメリットのため、購入率や客単価のアップが狙えるのです。

メイクシミュレーション

メイクシミュレーションでは、AR(拡張現実)の技術を活用して顔の画像にメイクのイメージを重ねることで、化粧品をバーチャル上で試せます。このシステムはリップやチーク、アイシャドウなどの色をスマホやパソコンで簡単にチェックでき、肌の色に合うか、あるいは化粧品同士の色の相性がよいかイメージしやすいのがメリット。現物が試せないという化粧品ECの大きな課題を、店舗に行かずとも解決し得るツールで、実際に購入率アップにも役立っています。例えば、クリニークが公式オンラインショップにバーチャルメイクを導入した結果、CV数が2.5倍上がり、売上げも30%増加しました。

メイクを落とす手間がなく実際に試すよりも手軽なシミュレーションは、ECに限らず実店舗でも導入数が増えています。

AI技術を使ったカウンセリング

AI技術を用いたカウンセリングも、化粧品EC化のための戦略として注目されています。

AIによるカウンセリングの代表例が、肌診断。この肌診断を受けると、シワ・シミ・ほうれい線などの分析結果から、適した化粧品やスキンケア方法を提案してもらえます。AIは美容のプロから見た実在の人物の印象データや、化粧品会社が独自に蓄積した肌データを参照しているため、一定の精度は期待できるでしょう。

資生堂では「肌パシャ」や「つや玉カウンセリング」など、複数の肌診断サービスを提供しています。スマホで斜め横顔の写真を送信するとAIが肌の状態を分析し、同年代の他人や過去の自分の肌と比較できるのが特徴。

AIカウンセリングは販売員によるアドバイスのような役割を果たし、ECサイトでの購入率を高めてくれる可能性があります。

口コミ・ユーザーレビュー

ECサイトでの売上げを伸ばすうえで、口コミやユーザーレビューは非常に重要。実際に商品を使った人の評判は、化粧品のオンライン購入に付きまとう不安を和らげます。ECサイトにレビュー機能を実装し、商品の感想とともに年代・肌質・愛用歴といった投稿者情報も記入できるようにすれば、より具体的な情報の提供が可能です。また、SNSや有名口コミサイトに投稿された口コミも利用可能。ZETA社の調査によると、「2021年版 ネット通販売上高ランキング」のTOP100サイトのうち、約80%がレビューを導入していました。化粧品業界に関しては100%が投稿者情報を掲載していることからも、ECにおけるユーザーの評価や情報の重要性がわかります。オルビスのサイトでも、UGC(ユーザー生成コンテンツ)ツールを導入してインスタグラムの口コミを掲載したところ、CV率1.2倍を達成しました。

顧客からの信頼獲得につながるユーザーレビューは、ECサイト運営に欠かせません。

SNSによる発信

マーケティングの幅を大きく広げるSNSは、ECサイトとも相性のよいツールのひとつ。商品の魅力発信はもちろん、サイトへの誘導やクーポン配布にも役立ちます。

ライブ配信や動画で実演販売できることも、SNSの大きなメリットです。動画は画像よりも色味の変化やテクスチャをわかりやすく伝えられるため、購買意欲を高める効果も。またライブ配信であれば、チャットでリアルタイムの反応を見て受け答えする、双方向のコミュニケーションが可能です。

大手化粧品メーカーのなかでも、KOSEは動画・ライブ配信に力を入れています。インスタグラムでは、メイクに関する悩み相談やプロのメイク術解説などを通じた商品紹介を随時配信中。

化粧品を積極的に買う女性の年代は、SNSをよく利用する層と重なっているため、効率的な訴求ができます。ECサイトを運営する際は、SNSも併せて活用するのがおすすめです。

 まとめ

化粧品のEC市場規模は、年々拡大する傾向にあります。一方で、「現物が試せない」「コンビニ、ドラッグストアの利便性に劣る」「競合が多く新規参入しづらい」といった特有の課題があるために、EC化が比較的進んでいません。しかし、メイクシミュレーションやAIカウンセリングなどのデジタル技術を取り入れることで、店舗での購入体験との差が小さくなってきているのも事実。ユーザーレビューやSNSも活用すれば、CVを増やせる可能性は十分にあります。

技術がさらに進歩すれば、今後も化粧品のEC化は進んでいくでしょう。化粧品のオンライン販売を目指している方は、競合他社の成功例を参考に戦略を練り、目標への第一歩を踏み出してみてください。